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一人一票実現の通過点としての最高裁大法廷弁論

2月23日、一人一票の裁判(2009年の衆院選に対する裁判)の最高裁大法廷の弁論があり、代理人として出頭してきました。

当日は、12時に最高裁近くの三宅坂公園に集合し、最高裁の正門まで行進。そこでは、元ヤクルトの古田さん達もご一緒しました(古田さんの後ろにうつむいて写っているのが僕です)。

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そして、最高裁正門(皇居に面しているところ)からは、代理人と原告のみが入ることが許され、代理人の一人として、升永弁護士、久保利弁護士、伊藤真弁護士らとともに正門から最高裁の頑強な建物の中に正面から入場しました(最高裁の入り口の階段には多くのマスコミが待ちかまえていて、カメラを回していました)。

その後、約1時間ほど、上告人待合室で控えていました。升永先生。久保利先生、伊藤先生は、事前にペーパーを用意されていましたが、最後まで法廷で何を話すのか真剣に考えていらっしゃいました。

1時15分、最高裁大法廷に。

大法廷は、予想以上に大きい法廷でした。法廷、というよりは、大きな会議場、という感じでしょうか。傍聴席も160席以上ありました。

代理人席は15人の裁判官席から見て、ハの字の形で配置されていて、それぞれ裁判官から見て右が上告人代理人席、左が被上告人代理人席となっていました。
机もしっかりしていて、椅子も重く、椅子を動かすのに相応の力がいりました。

それぞれ、5人×2列の10人のみ、代理人席が用意されていて、僕は升永、久保利、伊藤真とと並ぶ1列目の後ろの2列目、久保利先生の真後ろに座らせていただきました(事前に座る位置も決まっていて、升永先生がお決めになったようです)。

15人の裁判官の壇は、思ったほど高くなく、しかし、横に長いために威圧感は十分でした。
書記官は二人座っていました。

名古屋から連れてきた僕の修習生も、幸い抽選に当たり、傍聴することが出来ました。

1時半になり、厳粛な空気が流れる中、大法廷の大きな扉が開きました。

そして、竹崎裁判長以下、15人の裁判官が順に法廷に入って順次着席をしていきました。

この司法の最高権力を行使する、15人がそろいました。権力闘争を勝ち抜いてきた、一種のオーラを感じました。

全員が着席すると、カメラ撮影の時間となり、張り詰めた時間が過ぎました。

カメラ撮りが終わり、竹崎裁判長の合図によて、事務官が事件番号を読み上げます。事務官も遠くに見えました。

そして、竹崎さんから、上告理由書、答弁書についての陳述の確認があり、双方上告であったため、上告理由書、答弁書のそれぞれの「陳述」をしました(上告理由書の通りで結構ですか、と聞かれ、さようです、とこたえて終わりです)。

その後、竹崎さんから「意見を伺います」ということで、いよいよ、升永、久保利、伊藤真3氏による弁論が始まりました。

合計70分も確保されていました。

最初、升永弁護士から、本件の原理原則を徹底的に追及する弁論が行われました。

竹崎裁判長は、一切目をそらすことなく、冷酷なまでの鋭い視線を升永弁護士に向けていました。
どういった感情で聞いているのか、感情があるのか、ないのか、あるいはそもそも聞いているのかいないのかすら分からない冷徹な表情でしたが、これほどまでに真剣に代理人の訴えを最初から最後まで目をそらさない裁判官は初めてでした。

升永弁護士の後は久保利弁護士。
自身が東大時代に芦部先生に教わり、そこで「2倍を超えたら違憲、というが、2倍を超えなければいい理由がどうしても腑に落ちなかった」という疑問をずっと抱えてきた、ということから始まり、会社のガバナンスに照らした、オリジナリティ溢れる主張をされました。そして、最後に「国会と違って民主主義の基盤がないために立法府に遠慮をする、というとらえ方があるが間違っている。最高裁の裁判官は国民審査を受ける形で、国民からの審判を受けている。最高裁は国民とともにある」などと訴えられました。

そして、伊藤真弁護士。人格権、というところに落とし、0.5人前で許されるはずがない、などと説得的に訴えられました。司法試験の講義を聴いているようで、大変説得的な話をされました。最後に、裁判官の説明責任を訴えられ、説明の内容によって国民審査で国民がその裁判官を辞めさせるのだ、という趣旨の話をされました。

3氏とも、事前に用意してきたペーパーとは異なるアドリブをふんだんに織り込み、ご自身の生々しい感情と理性を全力で法廷で示されました。

大変感動し、また、これほど勉強になったことはありませんでした。

その後、国側の主張があり、事件は結審、判決の指定は「追って指定」ということで、閉廷し、15人の裁判長が退廷されていきました。

ところで、今回、普通あり得ないことがありました。

普通は、これで終わりです。でも、誰一人帰りませんでした。なぜか。

実は、高松の選挙管理委員会の委員長が、竹崎裁判長のお兄さんで、高松高裁の事件についてだけ、竹崎裁判長は回避されました。

ですので、高松の事件だけ、14人の裁判官で別途審理する必要が生じたのです。

次の法廷では、裁判官の配置が全部変わるため、10分近くの休憩の間、各裁判官担当の書記官(?)が壇上に上がり、六法の場所を移していました(先ほどの審理の間、六法に触った裁判官は一人もいなかったので、六法の位置を変える必要すらホントにあるのか疑問ではありましたが)。

休憩が終わり、那須裁判官が裁判長として咳に着席され、シャッフルされた位置に先ほどの裁判官が着席しました。もちろん、竹崎さんだけいません。

事件番号の読み上げがあり、那須さんが開廷を告げたのち、「先ほど伺った内容と同じということでよろしいでしょうか」と確認がなされて、すぐに結審となり、同じく「判決言い渡しは追って指定」とされました。

最高裁が、果たしてどのような判決を出すのかは分かりませんが、衆議院選挙に関する裁判では、違憲判決及び違憲状態判決を7件、合憲はわずか2件、という勝利を収めて最高裁に勝ち登っています。

最高裁には、一人一票の価値を正面から向き合い、どのような判決を下すにせよ、説明責任を果たす自覚を持って国民に分かるような説明をしてもらいたいと思います。

その意見を踏まえ、私たちは来るべき国民審査で、意思を表明していきたい、一人一票を軽視する裁判官には、退場願いたい、そういう過程を経て、本当の民主主義を掴み取っていきたいと考えています。

私たちは、最高裁に「良い判決をお願いしている」などとは思っていません。

一人一票は、私たち主権者が勝ち取るものだ、と考えています。

最高裁の大法廷も、最高裁の判決も、その一手段、一通過点に過ぎません。
仮に形式的には違憲判決であっても、その内容が不十分な判決であれば、国民審査で意思を表明し、裁判官をクビにしていく、そのことも含めて、私たちは民主主義を自らの手にすることができると考えています。

大事なのは、最高裁に違憲判決を書かせる、という程度の問題ではなく、私たちが一人一票の実現を勝ち取る過程において、民主主義を自分の物にしていく、ということが最も大事なことなのだと考えています。

一人一票実現の運動を、一人でも多くの人たちと一緒にしていきたいと思っています。

一人一票の実現に右も左も、上も下もありません。

既存の国会議員のための選挙から、主権者のための選挙の実現と、私たちが民主主義を掴み取る、そのことのために、頑張っていきたいと思っています。
by kahajime | 2011-02-26 22:49 | 一人一票