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「マガジン9」さんに連作を持たせていただいています。

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by kahajime | 2011-08-31 21:56 | 震災
先週、志賀原発2号機運転差し止め判決を書いた井戸裁判官との対談をしました。
準備にあたって、当然判決文は全部検討し、その他の判決も検討し、その他原発関係の専門書も、原子力推進側の専門書も含めて検討しました。

対談の責任を果たすためにかなりがんばりましたが、企画が終わるとどんどん頭から抜けていくので、せめて、井戸さんら3人の裁判官が書かれた金沢地裁平成18年3月24日付判決のポイントを、私の理解の範囲でまとめておきます。

大事なのは、判決文の60ページあたりと、170ページあたり以降です。

1.原告の権利
 差し止め請求を認める原告側の権利侵害としては、環境権は理由とならないが、人格権侵害が根拠となる(※人格権は、憲法13条に基づくものであり、民法上も定めがある)。

2 立証責任
 人格権侵害の具体的危険があること、つまり、許容限度を超える放射線を被ばくする具体的危険が相当程度あることを原告がまず立証する。
 この立証が成功した後、逆に被告北陸電力側が、具体的危険がないことを反証する。  
 (※これは、一見浜岡原発訴訟などの判決よりも原告に負担を課しているようであるが、最終的な立証責任を国側に転換した点で、この判決の結論を導く重要な柱となっている)。

3 地震が起こるなどの事態ない場合に、原発の多重防護が機能せずに過酷事故が起こる具体的危険性を原告は立証できていない(※これで判決文の3分の2は終わる)。

4 しかし、地震の検討に入り、被告側の耐震設計は、i 直下地震の想定が小規模に過ぎる、ii 考慮すべき邑知潟断層帯による地震を考慮していない、iii 原発敷地での地震動を想定する手法に妥当性がない等の問題点があるとした。そして、被告の想定を超えた地震動によって被告が構築した原発の「多重防護」が有効に機能せず、過酷事故が起こり、原告らが上記被ばくをする具体的可能性があることを原告は相当程度立証した。
 これに対し、被告北陸電力は、当時の指針に適合して建設した、ということばかりに終始し、具体的危険がないことの立証ができていない、とし、原告に軍配をあげます。

5 受忍限度の件
 そして、受忍限度を超えて違法であるかについては、本件原子炉の運転が差し止められても少なくとも短期的には被告の電力供給にとって特段の支障になるとは認め難く、他方で、被告の想定を超える地震に起因する事故によって許容限度を超える放射性物質が放出された場合、周辺住民の生命、身体、健康に与える悪影響は極めて深刻であるとし、人格権侵害の具体的危険は受忍限度を超えていると判断しました。

6 原告適格
 いったん過酷事故が生じた場合には、その影響は広範囲に及ぶと認定。チェルノブイリ事故の際でも8000キロ遠方にも放射性物質が飛散しており、また、食物の流通などで汚染が拡大する危険性がある、とし、熊本の原告についても、許容限度である年間1ミリシーベルトをはるかに超える被ばくの恐れがあるとし、全ての原告らにおいて、上記具体的危険が認められるとして原告適格を広く認めました。

 原発の危険が現実のものとなった今読めば説得的ですが、まだ事故が起こる前に、よくこれだけ踏み込んだ判決を書かれたものだと本当に感心します。

 東電福島原発の事故が現実に起こり、この判決が指摘していた点が全て現実のものとなったことに、驚きと共に、この判決を謙虚に受け止める必要があると痛感します。

 まずは、判決文を入手され、学習の素材とされると良いと思います。かなり深まります。
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by kahajime | 2011-08-28 22:34 | 原発
8月21日、名古屋市内で井戸謙一元裁判官の講演がありました。
講演では、自身が書かれた志賀原発2号機の差し止め判決の内容について、パワーポイントを使って解説いただき、その他、福島県郡山市で起こしている子どもたちの集団疎開訴訟、滋賀県大津地裁で起こしている敦賀原発の差し止め仮処分の裁判についても説明いただきました。

後半では、私が対談役を務め、集団疎開訴訟のことや判決のこと、裁判官の考えや今後の司法の役割などについてご自身のお考えをお話しいただきました。

お盆明けにもかかわらず多数の方にご参加いただき、充実した会になりました。

名古屋でも、多くの市民が原発の問題に関心を持っています。
とりわけ、敦賀の原発は、ひとたび事故でもあれば、名古屋に直接影響があります。

名古屋の弁護士としても、やるべきことをしていかねば、と思いを新たにした次第です。

具体的に考えていることがありますが、それはまた具体化する段階でご説明できればと思います。
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by kahajime | 2011-08-28 10:42 | 原発
8月21日(日)午後1時半より、名古屋市中区の女性会館(東別院駅徒歩3分)ホールにて、「原発と司法を問う」と題して、原発差し止め判決を書いた井戸謙一元裁判官の講演があります。

1時間半ほどお話しいただき(パワーポイントで、差し止め判決の解説など)、その後会場からの質問を私が集約しながら、井戸さんと私との対談を行います。

裁判をやるやらない関係なく、差し止め判決を学び、現在の原発差し止めに必要な知見を私たち市民もしっかり持って行く必要があると思います。

その意味で、判決を通してより精度の高い知見を身につける良い機会にし、原発に対する運動の力にしていきたいと思います。

なお、井戸は裁判官としての守秘義務があります。判決の説明、というレベル以上に、合議でどんな議論をしたのかとか、判決の行間を語るようなことは出来ません。ご了承ください。

井戸さんがこういった講演をするのは初めてのようです。貴重な機会ですので是非、ご参加ください。
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犯罪で圧倒的に多いのは窃盗事件である。

数年、検挙数は減ってきているようであるが、それでも断トツである。

私がここ数年で国選事件で担当した窃盗事件では、貧困を背景にした窃盗が増えている、という印象を持っている(なお、私は無罪判決を複数得ているが、うち2件は国選である。基本的に国選をしっかりやる、ということを大事にしており、私選で刑事弁護を積極的に受けることはしていない)。

私が担当した国選事件の方で、数年前までしっかりした会社で働いていたが、リストラとなり、離婚したうえ、いわゆるホームレスとなってしまった方がいる。

その人は、数年前、図書館の本を持ち出して窃盗で検挙され起訴をされてしまった。その件では執行猶予になるも、その1年後、お金も底をつき、売店の弁当(600円くらい)を窃取し、警察に突き出された。

示談をするお金もなく、起訴された。

起訴後、私が国選弁護人として受けた。

この人の置かれている貧困を打開しない限り、窃盗を繰り返す可能性は変わらないことは明らかであった。そこで知人のホームレス支援のNPOにつなぎ、住居が定まらないと仕事に就けない悪循環を立つために、まず暫定的な住居を確保。
その後、就労先などのあたりもつけ、就労の上被害弁償もする、再犯をさせない環境を作る、と裁判官に力説し、何とか再度の執行猶予を、と求めた。

しかし、裁判官は、被害弁償が出来ていないということを理由に、実刑とし、前回の執行猶予も取り消し、彼は一定長期間、刑務所に行くこととなってしまった。

図書館の本と、600円の弁当の窃盗で、長期の刑務所暮らしである。

被害弁償をしてくれる身内などのセーフティーネットがあれば、同じ過ちを犯した時点でも、その後の処遇は変わっていた可能性は十分ある。

被害弁償が出来る人的物的資源があるか否か、という点で、処遇が変わり、人的物的資源がないために、刑務所に行くこととなる、というケースは少なくないと思われる。

貧困であるために、容易に社会から排除されてしまう構図が見えてくる。

不公平である、と素朴に思う。

窃盗事件から見えてくる、悲しい今日の現状である。
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子ども子育て新システムの中間報告を改めて分析をした。

結果、はっきりしたこと。

①行政の、保育や幼児教育に対する責任を放棄することが至上命題。
②行政から保育園、幼稚園への助成システムを切り捨て、親への金銭給付とする(ただし園は代理受領)。この結果、国としては、「総量規制」をすることで、「社会保障費用の抑制」が容易に出来る。
③3歳未満児の受け入れ義務なし。結果、待機児童解消に全くならない。
④応能負担から応益負担へ、は決定。企業参入を進める以上、国は譲れないところ。
⑤国や地方自治体の権限や役割分担、裁量はなんと未定。
⑥財源のあては驚くことに全くない。消費税アップのだしに使われる。
⑦ただひたすら、「質の高い保育・学校教育」という言葉を繰り返して誤魔化しているだけで、具体的なビジョンはない。

そのそも、この間のWTの議事録を見ても、具体的な現実を前提とした議論がなされていない。
本来、待機児童解消、ということが目的の一つであれば、その現実を具体的な数値を示し、その問題解消のために具体的な議論をしていくのは社会科学としては当然であるが、こういった基本的な議論すらなされておらず、厚労省の用意した土俵の上で机上の空論が繰り返されているだけである。

これは厚労省の既定路線に、「有識者」がうまく利用され、「民主的プロセス」を装っているだけと言わざるを得ない。

お得意の「偽装民主主義」である。

そういえば、2月9日に、日弁連の企画で、泉健太衆議院議員(元内閣府政務官)が、「民主党は、幼保一体化は言ってきたが、応益負担は一言も言っていない。介護保険、障がい者自立支援法と併せて、応益負担にまとめていきたいという厚労省の美学に引きずられている」と本音を言っていたことを思い出した。

まさに、目的は、社会保障体系を「応益」に一体化するという厚労省の「美学」のためであって、子どものためでは全くない。

中間報告で、「新システム」では待機児童解消を目的としていないことがはっきりした。
行政の責任から保育を切り離し、「総量規制」をして財源を抑制する、という国のメリットしかないこともはっきりした。

厚労省のくだらない「美学」に、この国の子どもたちの健やかな成長が脅かされて良いはずがない。

新システムが導入されれば、子どもの貧困も拡大し、子どもの安全も脅かされます。

子どもを守ろうとすることを国が放棄する制度。それが「子ども子育て新システム」

これでは本当に国が滅びます。
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by kahajime | 2011-08-13 00:57 | 保育
「社会保障法のプロブレマティーク~対立軸と展望」(法律文化社)という本を読み始めています。

この本は、2001年から小泉政権が集結するまでの間で、「日本の社会保障の実態が崩落の過程にあり、その勢いは止まらない状況にあった」ことを、分析しています。

社会の崩壊の予兆が見える、と厳しい分析をしています。

最後に残ったのが、保育です。

「子ども子育て新システム」によって、「社会の崩壊」が進むのではないか、と危惧しています。

ジュンク堂などの大きい専門書店に行っても、子ども子育て新システムについての本は、「保育」という本棚の隅っこに、中山徹先生のブックレットがあるくらいです。

「子ども子育て新システム」は、「保育」という分野だけの問題ではなく、子どもの貧困をさらに拡大する社会問題としてしっかり位置づける必要があると思っています。

そういった観点からの分かりやすい冊子が必要かと思っています。
夏の間にたたき台を作ってみます。
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by kahajime | 2011-08-01 22:05 | 保育