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3月25日、一票の格差訴訟で、広島高裁(筏津裁判長)は、去年の衆議院選挙を違憲とし、さらに戦後初めて、「選挙無効」の判決を出しました。

26日にも広島高裁岡山支部で、違憲無効判決が続いて出されました。

合計6人の高裁の裁判官が、「違憲無効」と判断したという事実は重いものです。

3年余り前の衆議院選挙から、僕ら升永弁護士グループは違憲訴訟を起こし、それ以前からずっと続けてこられた弁護士のグループとは別の裁判を作ってきました。

従来は、「議員定数不均衡訴訟」と言われ、「議員定数」の「不均衡」の問題とされてきました。

しかし、私達は、この問題は、「議員定数」の問題ではなく、主権者の「一票の価値」の問題だ、ということを前面に出し、当初、マスコミが「議員定数不均衡訴訟」と報ずるたびに「議員定数不均衡訴訟ではない、一票の格差訴訟だ」と指摘してきました。しばらくして、マスコミも「一票の格差」という表現を使うようになり、最近定着してきました。

また、これまでは、「2倍、3倍」という「倍数」で表現されてきたのですが、私達は、「0,3票」「0.5票」という表現を意識的に用い、「自分の選挙権は0.3票しかないのか」などと「一票の格差が生じている」という本質を伝えるようにしてきました。

さらに、「平等権侵害」という組み立てではなく、「民主主義社会の統治のガバナンスの問題」と位置づけました。従来、「平等権侵害」と訴えてきたために、「ある程度の格差があっても、それが相対的平等といえるなら、違憲ではない」とされ、違憲判断が回避されてきた、という経緯があります。

そこで「一人一票」は、議会制民主主義社会の基本だという「統治の問題」から、厳密な一人一票が必要だ、という主張を展開してきました。

こういった主張を柱に、3年余り前の衆議院選挙の時から、僕ら升永グループ(当初は数名しか弁護士がいませんでしたが)は裁判を起こしてきました。

3年余り前の選挙に対する裁判では、2011年3月に最高裁が違憲状態の判決を下しています。

しかし、その後、時間的猶予がかなりあったにもかかわらず、国会は選挙区割りを是正せず、最高裁の判断を軽視してきました。

国会議員は、いったん選挙に受かってしまえば、次も同じ選挙区で受かりたい、という「利益」が生じます。そのため、区割りの是正は進んできませんでした。

こうした背景には、「どうせ裁判所は無効判決など出さない」という司法を舐めた発想が国会議員にはあったのだと思います。

そして、去年12月の選挙は、最高裁が「違憲状態を正せ」と指摘してからかなりの時間があったのに、是正しないまま選挙が行われたわけです。

これは、国会全体の怠慢、であり、かつ、主権者である国民の一人一票の価値を軽視し、そして司法を軽視した対応だと司法が受け止めるのは当然です。

私達は、「今の選挙は、主権者のための選挙ではなく、国会議員のための選挙になっている」と指摘し、利害関係人本人である国会議員自身が、選挙区割りを正せないのであれば、司法が正すほかない、と訴えてきました。

今回、3月25日に広島高裁、良く26日に広島高裁岡山支部で、違憲無効判決が出た、ということは、一人一票を軽視してきた国会への厳しい審判でありますが、当然の審判であると思います。

国会が主権者の一票の格差を正さず、憲法違反についても軽視し、司法を軽視している以上、裁判所はもはや国会に遠慮することなく、正面からすべきことをするほかありません。

広島高裁の判決文は、極めてオーソドックスで、当たり前の判決です。

裁判長の筏津さんは、以前名古屋にいましたが、その時も普通の裁判官、という印象でした。

今回2回違憲無効判決が続きましたが、「普通の裁判官」6名が、司法に与えられた役割を粛々と果たした、ということだと思います。

国会は、選挙区割りを速やかに正すとともに、主権者の一人一票が正しく反映される選挙制度を根本的に作り直していくべき時ではないか、と思います。

「身を削る」などと言って、国会は比例削減とか、国会議員の定数の大幅削減をしようとしていますが、それは「一人一票」の実現からは逆行するものです。

国会は、議論のすり替えをせず、正面から、一人一票の実現に向け、主権者である国民のための選挙区割りの実施と選挙制度改革をしていくことを強く求めます。
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消費税の逆進性対策について、議論をまとめてみました。

(1)消費税の逆進性
 逆進性を持った租税が逆進課税であり、所得や資産の額が小さくなるほど、その額の中に占める税額の割合が大きくなる課税を言い、累進課税の反対概念である。
 一般に高所得者よりも低所得者の方が所得のうちに消費に回す割合が高いと考えられるため、消費一般に対して課税する消費税は逆進性を有する、とされる(「国立国会図書館 ISSUE BRIEF 749「消費税の逆進性とその緩和策」加藤慶一より)。
 逆進性の問題に対する緩和策としては、軽減税率と給付付き税額控除が上げられる。
 2013年1月時点で、与党は軽減税率の検討をしているが、議論自体は進展せず、先送りを早々と決めた。

(2)軽減税率について
 政府が検討している軽減税率は、果たして消費税の逆進性を解決するのか。
 確かに、軽減税率の導入により、確かに富裕層と貧困層の税負担率の差は縮小する。
 しかし、富裕層も軽減税率の恩恵を受けることから、絶対額で見た場合、富裕層の軽減税率の恩恵を受けてしまうことが統計的にも明らかとなっている。

 さらに、複数税率の1つとして、贅沢品と生活必需品と出分けるということも考えられる。
 フランスでは、キャビアが標準税率19.6%で課税されているのに対して、フォアグラとトリュフは軽減税率5.5%で課税されている。マーガリンは標準課税で課税されるのに、バターには軽減税率が適用される。これらの背景には、国内業者に対する配慮があるとされている。
 また、良く紹介される例として、イギリスでは、標準課税の外食と、軽減税率の食料品を分ける基準として、「気温より高く温められたかどうか」が採用されているが、その基準の妥当性については議論がある。
 カナダでは、ドーナッツを6個以上購入すれば、軽減税率が適用されるが、5個以下では標準課税が適用されている。ドーナッツを多く買う、ということは、貧しい家庭であるという推定の下に、多く買う場合には軽減税率が適用されているらしいが、ドーナッツ会社の利益になっているだけのようにも思える。

 また、複数税率については、取引毎にやる必要があるため、一般にインボイスが必要とされている。しかし、日本はヨーロッパ諸国と異なり、インボイスを取っていないため、複数税率を設けることは技術的にそもそも困難である。 

 そうなると、消費税の逆進性を軽減税率の導入によって解決することは困難である。

(3)解決策としての給付付き税額控除
 では、どのような解決方法が考えられるだろうか。
 この点については、給付付き税額控除の導入が望ましいとの主張が強く唱えられている。
 給付付き税額控除とは、社会保障と税制を一体化した仕組みであり、所得税の納税者に対しては、税額控除を与え、控除しきれない分や課税最低限以下の者に対しては現金給付を行うというものであり、現在、欧米各国で採用されている制度である。

 ⅰ)消費税の逆進性の解消を、消費税の枠の中だけで解消する必要は必ずしもない。
 所得税なども含めて総合的に対応し、「個人所得税減税プラス所得税増税」を実現し、逆進性を緩和するということが考えられる。
 しかし、個人所得税がゼロ、という低所得者の場合、それ以上の減税が出来ず、消費税増税の負担だけをもろにかぶってしまう。
 そこで、給付付き税額控除が考えられる。

 給付付き税額控除の利点としては、消費者の財・サービスの選択を歪めない、という意味で中立的であり、効率性を阻害しない。また、所得を適切に把握した上で本当に必要な者に恩恵を及ぼすことで、効果的な再配分が可能となる。
 給付付き税額控除は、実際にカナダなどではかなり行われている。カナダの「GSTクレジット」は、付加価値税であるGST(Goods and Service Tax)が1991年に導入された際、生活必需品にかかるGST負担を還付する目的で導入されたものである。
 税額控除といって、灯油やガソリンなどについては消費税で徴収しても、所得税で戻す、ということを行っている。
 
  もっとも、現実には計算が困難であり、家族控除のような形が取られている。
  カナダの事例などを参考に、我が国でも給付付き税額控除が検討されるべきである。

   
 ⅱ)さらに日本では、税と社会保障の実行負担率を見た場合、社会保険料の逆進性の問題の方が深刻である。

 逆進性という点では、消費税の逆進性単独の問題よりも、消費税も含めた税と社会保障全体の逆進性の問題の解消が必要である。
 そこで、税と社会保障を一体的に捉えて、所得税の方で調整して返すということも検討されてしかるべきである。 
 しかし、日本では、税は国税庁、社会保険料は日本年金機構と別々であり、また所得情報は国税庁と地方自治体に分散している。

  したがって、少なくとも国税庁と日本年金機構とで、この点の一体化が必要であるが、「社会保障と税の一体改革」という名の先の「改革」では、こういった本質的な意味での「一体化改革」は何もされることなく、消費税増税だけが決まった感が否めない。

  社会保障の負担の「逆進性」の方が遙かに問題であることからすれば、税と社会保障を一体的に捉えた上での逆進性の解消をしなければ、実質的な「逆進性」は何ら解決しない。

  本質的な「社会保障と税の一体改革」が求められる。
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告知をしていませんでしたが、今日、3月2日、マガジン9さんの主催で、東京のカタログハウス(「通販生活」の会社)ビルにて、午後2時から(開場は一時半)、東京新聞の半田滋さん、JIM-NETの佐藤真紀さんと僕の3人の企画があります。

日本はついに平和国家の看板を下ろすのか。

http://www.magazine9.jp/

安倍政権が前のめりになって進める憲法改正や国家安全保障基本法のことなど、アジア状勢を踏まえ、また、イラク戦争を振り返りながら、議論を進めたいと思います。

当日参加も可能です。
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by kahajime | 2013-03-02 01:58 | 憲法