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 以下は、金融資産課税などを検討するにあたって、その前提として、二元的所得税の点について、自分なりに頭を整理として書かせていただいたものです。不正確な部分もあるかと思いますので、おつきあいいただく必要は全くありません。

(1)二元的所得税とは
  二元的所得税とは、個人の所得を賃金・給与等の「勤労所得」と、利子・配当・キャピタルゲイン・不動産所得等の「金融・資本所得」〔以下、資本所得)の2つに分けて、勤労所得に対してはこれまで通りの累進課税を課すが、金融・資本所得は合計して分離し、比例税率を課すという税率である(財務省財務総合政策研究所「フィナンシャルレビュー」平成23年第1号「グローバル経済下での租税政策」森信茂樹17頁)。

 資本所得の税率は、法人税率や勤労所得の最低税率と同水準に設定されている。
 また、資本所得の中では、損益通算や損失の繰り越しは可能だが、勤労所得と金融所得の間の損益通算は原則として出来ない。
   
 この税制の考案者であるCnossenは、二元的所得税の基本的特徴として、以下の7点の要素を上げている。
 ①全ての所得を資本所得と勤労所得に分ける。
 ②資本所得は比例的な法人税率によって課税され、勤労所得は累進税率によって課税される。勤労所得の最低税率は法人税率と同水準に設定する。
 ③資本所得と勤労所得は完全に分離して課税される。あるいはまず法人税率で課税され、その後追加的に推進的な所得税率で課税される。分離課税により様々な形態の資本所得に対してフラットな源泉課税を課すことが可能となる。
 ④法人段階と株主段階の法人所得に対する二重課税は完全インビュテーションにより回避できる。同等の効果を持つ代替的な方法としては、株主段階で配当所得を非課税にすることである。
 ⑤企業段階の留保利益に対する二重課税は、株主に対して、法人税のかかる留保利益の分だけ株の簿価の引き上げによる回避することが出来る。代替的な方法としては、譲渡益を非課税にすることである。
 ⑥法人税の税率で資本所得を企業段階、あるいは支払い段階で、支払う主体から源泉徴税する。
 ⑦個人企業、非公開企業の収益は、資本所得と勤労所得に分かれる。資本所得分は、企業の資本価値に予想収益を適用して計算し、残りが勤労所得となる。

 以上のように、Cnossenが考える純粋な二元的所得税には、「資本所得に対する一律の源泉課税が、企業段階で行われる」という条件が加えられている。

 二元的所得税の背景としては、国際的な資本移動の拡大を背景に、移動性の高い資本に対する課税を軽減せざるを得ないという事情があった。特に高税率の北欧諸国では、租税回避活動が活発になり、適切な資本所得税が困難となった。
 
 そこで、税財源の確保と移動性の高い資本に対する低率課税というジレンマを解決するために、所得全体を資本所得と勤労所得に分割し、それぞれに対して異なる税率を課す、という方法が採択されるようになった。

 Cnossenが提唱した純粋な二元的所得税は、何処の国でも行われていないが、比較的近いのはノルウェーであるといわれている。

 二元的所得税の導入により、基本的に全ての所得が一律に課税され,労働所得については付加的な累進所得税率が適用されるようになった。

 二元的所得税の税額は、T=τ〔R-δK-rB〕+τrB=τ(R-δK)であり、結果的にCBITと同じとなる。

(2)二元的所得税の長所及び短所
  二元的所得税のメリットであるが、CBIT同様、株式調達と負債調達に対する中立性が確保される。また、株式発行と内部留保に対する中立性が確保される。

 しかし、デメリットとして、投資に対する中立性は確保されない。
 また、所得分割制度が二元的所得税のアキレス腱であるといわれている。

 自営業や非公開オーナー企業の経営者の所得は、勤労所得と資本所得の境目が必ずしも明確ではない。そのため、出来るだけ税率の低い資本所得で報酬を受け取ろうとする。こうした経営者の行動を防ぐ手段として、二元的所得税では所得分割制度がとられる。

 所得分割制度では、資本所得の帰属計算が行われ、それを所得全体から除くことによって勤労所得が計算される。
 ノルウェーでは、自営業者や能動的オーナーと呼ばれる、株式か配当の3分の2以上を保有しまたは受け取っている経営者に対して、所得分割制度に従った課税がされてきた。
 しかし、所得分割法の下で、家族経営企業が、家族内で株式保有率を変えるなどして、経営者の数を増やして受動的オーナー化する等の方法がとられ、所得分割を回避する現象を招いてしまった。
 
 Sorensen(2005)によれば、所得分割法に従う法人の割合は、1992年から2003年にかけて55%から32%に低下した、とされる。

(3)二元的所得税の問題点克服のためにいかなる税制改革が必要か

 ⅰ)二元的所得税の上記のような問題点を克服するために、ノルウェーでは2006年から所得分割制度が廃止され、株主所得税(SIT)が導入された。SITは、個人段階における株式投資の超過収益に対する資本所得税である。2006年からのSITを含む二元的所得税は、法人段階における資本所得と勤労所得の適切な分割を目指すのではなく、個人段階において株式投資の超過収益に対して、法人税とSITを合わせて勤労所得並みの課税を行うものである。

 SIT導入に伴い、インビュテーション法とRISK法が廃止されたが、SITは株式投資の超過収益のみに課税するため、配当やキャピタルゲインに対する二重課税は回避できる。

 また、RRAという帰属収益控除が翌年にステップアップされることで、内部留保による課税繰り延べの問題も排除できる。

 SITを含む二元的所得税は、所得分割という手法を回避しつつ、インビュテーション法とRISK法の下で実現されていた二元的所得税の利点を確保し続けており、二元的所得税の弱点を克服する取り組みと捉えられていた。

 ⅱ)しかし、株式取得税の欠点として、以下の点が上げられる。
 まず、投資の促進につながらない、ということである。個人段階の調整は、運用コストが高く、この点でACEの方がベターではないかと指摘されている。

 また、RRAは居住者のみが対象であり、ACEが外国人や非課税投資家にも適用されることに比べて、税収減が大きいという問題がある。
 また、社会保障費増加に対応して勤労所得税率を引き上げると、資本所得税率も引き上げざるを得なくなり、二元的所得税の利点が失われてしまう。

 ⅲ)そこで、より抜本的な法人改革案がいくつか提唱されている。
 Mirrlees Review が示した改革案は、基本はACEの利点を重視しつつ、二元的所得税の利点を合わせようとするものであり、1つは所得課税案(二元的所得税案)である。

 これは、資本所得は、勤労所得に対する最高税率よりも低い税率で課税する。
 また、個人事業主は所得分割制度を利用する。

 さらに、キャピタルゲインの「ロックイン効果」は、Vickrey(1939)の方向により回避する。

 もう一つは、消費課税案(株主所得税案)である。RRAによって正常利益が非課税とされ、安全利子率を超える利子所得がある場合には課税される、というものである。

 このように、抜本的な改革案が複数指摘されており、基本的にACEの利点と二元的所得税の利点を活かしていく方向性が望ましいものと思われる。

 ⅳ)そのほか、二元的所得税に対しては、高所得者に偏る金融所得を分離して低率で課税することから、垂直的公平性の観点から問題が多いという批判が継続的に行われてきた(上記森信茂樹氏「フィナンシャル・レビュー」誌上「グローバル経済下での租税政策」19頁)。
 これに対して、二元的所得税を導入したスウェーデン、オランダ、ドイツの税制改革を全体としてみると、給付付き税額控除の導入、住宅手当や子育て支援等の社会保障支出の拡充が同時期に行われており、意図したかどうかはともかく、効率的な税制という観点からの二元的所得税の導入に伴う垂直的公平性への懸念に対して、社会保障支出の拡充と組み合わせることにより、つまり、税と社会保障の一体的改革により、全体としてバランスを取っていると考えられる。

 各国とも国境を越え、ヒト・モノ・カネが自由に行き来するグローバル時代の租税政策として、効率と公平のトレードオフに悩みつつ、北欧諸国等では、二元的所得税の導入と社会保障支出の拡充を一体とした政策運営を行っている、と森信氏は評している。 

 ⅴ)我が国の税制は、とかく消費税のみが議論になりがちである。先の「社会保障と税の一体改革」も名ばかりで、社会保障と税との一体改革となっていない。
 北欧等で進む二元的所得税などと、それに伴う社会保障全体の一体改革の教訓を学びながら、我が国でもACEと二元的所得税を基本にしつつ、本来的な意味での税と社会保障の一体改革も含めて、抜本的な税制改革を進めていくことが切望されるところである。
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今年の10月から、マイナンバー制度の通知カードが役所から発送されることになっています。

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なお、マイナンバー制度については、金融資産課税が狙いではないか、とも言われています(伊藤元重教授は明確に金融資産課税の活用を念頭に置いています)。金融資産課税については、別途少し検討したことがありますので、別途書かせていただきます。
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4月29日に名古屋市・昭和区講堂で開いた「安保法制について考える市民集会」は、講堂が満席の状況になり、物理的にも熱気溢れる集会となりました。
「川口創弁護士と市民有志」という怪しい主催団体だったにもかかわらず、多数の皆さんにご参加いただきましたこと、深く感謝申し上げます。

半田滋さんから、安保法制の概要と問題点を整理してお話しいただき、私との対談で問題点を掘り下げて議論していきました。

また、近藤昭一議員(民主)も駆けつけて下さり、安保法制に対峙する決意をしっかり語って下さいました。

これからがまさに本番です。
やれることはまだまだたくさんあります。

諦めたら相手の思うつぼ。一つのきっかけで大きく状況が変わる可能性があります。
確信を持って取り組んでいきたいと思います。
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by kahajime | 2015-05-10 00:44 | 憲法