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08年4月17日の名古屋高裁イラク派兵違憲判決の判決文を抜粋しました。ご活用下さい。

■イラク各地における多国籍軍の軍事行動 ~ファルージャ
 イラク中部のファルージャでは,平成16年3月,アメリカ軍雇用の民間人4人が武装勢力に惨殺されたことから,同年4月5日,武装勢力掃討の名の下に,アメリカ軍による攻撃が開始され,同年6月以降は,間断なく空爆が行われるようになった。
 同年11月8日からは,ファルージャにおいて,アメリカ軍兵士4000人以上が投入され,クラスター爆弾並びに国際的に使用が禁止されているナパーム弾,マスタードガス及び神経ガス等の化学兵器を使用して,大規模な掃討作戦が実施された。残虐兵器といわれる白リン弾が使用されたともいわれる。これにより,ファルージャ市民の多くは,市外へ避難することを余儀なくされ,生活の基盤となるインフラ設備・住宅は破壊され,多くの民間人が死傷し,イラク暫定政府の発表によれば,死亡者数は少なく見積もって2080人であった。

■首都バグダッド
 アメリカ軍を中心とする多国籍軍は,時にイラク軍等と連携しつつ掃討作戦を行い,特に平成19年に入ってから,バグダッド及びその周辺において,たびたび激しい空爆を行い,同年中にイラクで実施した空爆は,合計1447回に上り,これは前年の平成18年の約6倍の回数となるものであった。

■多数の被害者
 世界保健機構(WHO)は,平成18年11月9日,イラク戦争開始以来,イラク国内において戦闘等によって死亡したイラク人の数が15万1000人に上ること,最大では22万3000人に及ぶ可能性もあることを発表し,平成18年10月12日発行の英国の臨床医学誌ランセットは,横断的集落抽出調査の結果を基にして,イラク戦争開始後から平成18年6月までの間のイラクにおける死者が65万人を超える旨の考察を発表している。
 また,イラクの人口の約7分の1にあたる約400万人が家を追われ,シリアには150万人ないし200万人,ヨルダンには50万人ないし75万人が難民として流れ,イラク国内の避難民は200万人以上になるといわれている。

■航空自衛隊の空輸活動
 航空自衛隊のイラク派遣当初は,首都バグダッドは安全が確保されていないとの理由で,バグダッドへは物資人員の輸送は行われていなかったが,陸上自衛隊のサマワ撤退を機に,アメリカからの強い要請により,航空自衛隊がバグダッドへの空輸活動を行うことになり,平成18年7月31日,航空自衛隊のC-130H輸送機が,クウェートのアリ・アルサレム空港からバグダッド空港への輸送を開始した。以後,バグダッドへ2回,うち1回は更に北部のアルビルまで,タリルへは2回,それぞれ往復して輸送活動をするようになり,その後,週4回から5回,定期的にアリ・アルサレム空港からバグダッド空港への輸送活動を行っている。
 平成18年7月から平成19年3月までの輸送回数は150回,輸送物資の総量は46.5トンであり,そのうち国連関連の輸送支援として行ったのは,輸送回数が25回で,延べ706人の人員及び2.3トンの事務所維持関連用品等の物資を輸送しており(平成19年4月24日衆議院本会議における安倍首相の答弁),それ以外の大多数は,武装した多国籍軍(主にアメリカ軍)の兵員であると認められる。

■憲法9条1項違反
 (航空自衛隊は)多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行っているものといえる。したがって,このような航空自衛隊の空輸活動のうち,少なくとも多国籍軍の武装兵員をバグダッドへ空輸するものについては,前期平成9年2月13日の大森内閣法制局長官の答弁に照らし,他国による武力行使と一体化した行動であって,自らも武力行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動であるということができる。
よって,現在イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は,政府と同じ憲法解釈に立ち,イラク特措法を合憲とした場合であっても,武力行使を禁止したイラク特措法2条2項,活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し,かつ,憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる。

■平和的生存権について
 平和的生存権は,現代において憲法の保障する基本的人権が平和の基盤なしには存立し得ないことからして,全ての基本的人権の基礎にあって,その享有を可能ならしめる基底的権利である。
 例えば,憲法9条に違反する国の行為,すなわち戦争の遂行,武力の行使等や,戦争の準備行為等によって,個人の生命,自由が侵害されまたは侵害の危機にさらされ,あるいは,現実的な戦争等による被害や恐怖にさらされるような場合,また,憲法9条に違反する戦争の遂行等への加担・協力を強制されるような場合には,平和的生存権の主として自由権的な態様の表れとして,裁判所に対し当該違憲行為の差止請求や損害賠償請求等の方法により救済を求めることができる場合があると解することができ,その限りでは平和的生存権の具体的権利性がある。

■控訴人らの請求について
 関係各証拠によれば,控訴人らは,それぞれ重い人生や経験に裏打ちされた強い平和への信念や信条を有しているものであり,憲法9条違反を含む本件派遣によって強い精神的苦痛を被ったとして,本件損害賠償請求を提起しているものと認められ,そこに込められた切実な思いには,平和憲法下の日本国民として共感すべき部分が多く含まれているということができ,決して,間接民主制下における政治的敗者の個人的な憤慨,不快感又は挫折感等にすぎないなどと評価されるべきものではない。

 
 
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by kahajime | 2015-06-24 00:16 | イラク
名古屋高裁で違憲判決を勝ち取ったイラク訴訟弁護団として、 6月11日、下記の声明を出し、記者会見を行いました。
                                             
憲法違反の「安保法案」の即時撤回・廃案を求める
名古屋高裁イラク派兵違憲判決・弁護団声明


 1.政府は、集団的自衛権の行使の実態を国民に隠している

 安倍政権が解釈によって行使を解禁する「集団的自衛権」とは、「自国への攻撃がなされていないのに他国に武力行使をする」、つまり「自国防衛と無関係の戦争に参戦する」ということに他ならない。その際、想定されるのはかつての「国対国」の戦争ではなく、非対称の戦争、いわゆる「テロとの戦い」である。自衛隊が「テロとの戦い」に参戦するというのはどういうことなのか、その実態を直視する必要がある。  

 2003年3月に米国主導で始められたイラク戦争も「テロとの戦い」であった。イラクに対し、日本政府は「人道復興支援」名目にて自衛隊をが派遣したが、2008年4月17日、名古屋高等裁判所が航空自衛隊の輸送活動について、「米軍の武力行使と一体化しており、憲法9条1項に違反する」との違憲判決を下した。
 
 名古屋高裁違憲判決は、「テロとの戦い」と称される現代の戦争の実態をとても端的にわかりやすく指摘している。同判決は、イラクでは「テロリスト掃討」名目の掃討作戦においてクラスター爆弾やナパーム弾などの大量殺戮兵器が使用されたこと、イラク戦争開始後のイラクにおける死者が65万人に及ぶとの統計もあることを認定した。「テロとの戦い」の実態が市民に対する大量虐殺である、という事実を端的に示している。同時に、同判決は、イラク戦争において多数の米兵も命を落としている実態も認定している。
 
 現在、国会では、安倍首相が提示する、およそフィクションとしか言いようがない事例を前提にした「議論」が続けられている。自衛隊がどのような戦争に参戦していくかについて、リアリティーのある議論がなされていない。

 集団的自衛権を認めることによって、自衛隊は市民に対する大量虐殺を担うことになる。これが、現代の戦争、いわゆる「テロとの戦い」の実態である。この実態を覆い隠しながら、国家の根幹に関わる、国民の命にも関わる問題を強行しようとしている安倍政権の姿勢は、民主主義国家としてあるまじき態度であるとして、厳しく批判せざるを得ない。
 
 2.安保法案は「他国の武力行使との一体化」は明らかであり憲法違反である

 安保法案では、自衛隊の活動地域について、地理的限定をなくした上で、さらに、自衛隊の活動地域について、武力行使一体化をさせないための枠組みであった「非戦闘地域」の概念を否定し、「現に戦闘行為を行っている現場」以外での活動を可能とする。 さらに、弾薬・燃料等の軍事物資を米軍及び他国軍隊に補給することも可能とする。

 しかし、名古屋高裁違憲判決は、イラクで活動を行った航空自衛隊の輸送活動について、憲法違反であると判断した。その理由は、イラク特措法に従えば自衛隊の活動地域は「非戦闘地域」に限られるところ、航空自衛隊の輸送先であるバグダッドは非戦闘地域とは認められないこと、輸送物が武装した米兵であったこと、から政府見解(大森4要件)に照らし、他国による武力行使と一体化した行動と言わざるを得ないとして、憲法9条1項違反と断じたのである。

 このような名古屋高裁違憲判決の理屈に従えば、安保法案が非戦闘地域の概念を否定し、「現に」戦闘をしていない「現場」以外、すなわち戦争の最前線においても活動することを否定しない時点において、他国の武力行使との一体化を想定しているものと評価せざるを得ない。 

 また、名古屋高裁違憲判決においては、「現代戦において輸送等の補給活動もまた戦闘行為の重要な要素であるといえること」を大前提として違憲判断が行われた。安保法案が想定する、米国に対する弾薬の輸送などの軍事物資補給は、武装した兵員輸送より一層明確な戦闘行為と評価される。この点においても、安保法案の想定は、他国の武力行使と一体化するものと判断せざるを得ない。

 以上のように、名古屋高裁違憲判決に照らし、安保法案は、他国の武力行使と一体化する内容を含むものであり、憲法9条1項に違反するものである。

 武力行使一体化の歯止めをなくしてしまえば、当然、自衛隊が戦闘行為に巻き込まれる危険は飛躍的に増大する。「テロとの戦い」の現場で、他国の国民を殺し、また殺される事態に直面することは必至である。ひとたび、戦闘行為に参加していると評価される事態に至れば、報復を受けることは避けられない。自衛隊が戦闘行為の当事者になるのは時間の問題となる。

 かかる深刻な事態について、安倍政権はまったく国民に伝えていない。「抑止力が高まって戦争がなくなる」などと喧伝しているが、戦争の実態を無視する「虚偽広告」であって、到底認められるものではない。 
 
 3.戦争は国民を騙すところから始まる

 イラク訴訟において、イラクにおける航空自衛隊の輸送活動の実績について、情報開示を求めたところ、当初、黒塗りの「開示文書」ばかりが提出されてきた。
 しかし、自衛隊のイラク撤退後、民主党政権への政権交代直後の2009年9月、防衛省は自衛隊のイラクでの空輸活動の実績を全て開示した。 この文書により、連日多数の米兵など多国籍軍兵員の輸送をしたこと、その結果、合計2万人以上の多国籍軍兵員を輸送した実績が明らかとなった。

 これに対して、「貨物」において、人道物資と思われるものとしては、2004年はじめに航空自衛隊が最初に輸送をした時の「医療器機」以外、一つもなかった。
 国民向けには、「自衛隊はイラクで人道復興支援をしている」と装いながら、人道支援はしていなかった。実際には武装した米軍を掃討作戦の最前線であるバグダッドまで輸送する、という米国の武力行使と一体化する軍事活動を行ってきたのである。
 自衛隊のイラク派兵において、自衛隊の活動内容を「人道支援」だと国民を騙しながら、実際には米軍の戦争を支える軍事活動を行っていた(第一次安倍内閣の時期も含む)のが事実である。現在、安倍政権は、「戦争をする国にはならない」「安保法案は憲法上合憲だ」などと喧伝しているがまったく信用できない。

 4.安保法案は即時撤回・廃案を

 自衛隊イラク派兵差し止め訴訟について、名古屋高裁での審理が始まった2006年夏は、航空自衛隊によるバグダッドへの輸送活動が開始された時期であると同時に、第一次安倍政権が発足した時期とも重なる。

 安倍政権は、国会での議論を軽視し、自身が正しいと考える政策を次々断行した。この安倍政権の姿勢に対し、当時、「国会が機能していない」「議会制民主主義が軽視されている」などと厳しく批判されていた。原告・弁護団は、法廷で、「国会が機能していないときだからこそ、憲法を守るためには裁判所が正しく判断する他ないではないか。司法が今、政府の過ちを正す時だ」などと裁判官に厳しく迫り続けた。

 その結果、言い渡された名古屋高裁違憲判決は、第一次安倍政権下、議会制民主主義が機能していない中で審理を行った結果、言い渡されたものである(※判決言い渡し時は福田政権であった)。言い換えれば、民主的な議論を行わず、法の支配を自らの考えでねじ曲げようとした安倍首相が、違憲判決の産みの親とも言い得る。

 現在の安倍政権下でも、同様に民主的な議論の軽視、及び、法の支配の軽視がされている。国会における、安倍首相はじめとする閣僚の答弁はごまかしの答弁ばかりであり、まともな審議がされているとは到底評価され得ない。加えて、対米公約を優先していることから、国会での審議を軽視していることは自明である。第一次安倍政権のとき以上に議会制民主主義が機能せず、立憲主義・法の支配が蔑ろにされていることは明らかである。

 私たちは、まさに、憲法9条に違反する国の行為を日々目撃している。安保法案が万が一にも成立した場合には、平和的生存権侵害に対する訴訟が多数申し立てられることになろう。その際、裁判所は先例である名古屋高裁違憲判決にしたがって憲法9条違反を判断することも十分あり得る。

 しかしながら、具体的な審理をまつまでもなく、名古屋高裁違憲判決の論理上、現在政府が提出している安保法案の違憲性は、以上のとおり明白である。

 私たち、イラク派兵差止訴訟弁護団は、憲法違反であることが明らかである安保法案の即時の撤回・廃案を政府に対して強く求める。
 
 
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by kahajime | 2015-06-20 23:43 | イラク