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「園庭において適切な環境を享受する権利」

とても久しぶりにブログを更新します。申し訳ありません…。

名古屋の中区にある名古屋教会幼稚園の南側に15階建てのマンションが建設されており、その差し止めを求める仮処分を起こし、9月26日に決定が出ました。結論としては建設の差し止めは認められませんでしたが、判断の中で、私どもが訴えた「適切な保育環境を享受しながら発達する権利」を踏まえ「園庭において適切な環境を享受する権利」を認めており、画期的な部分があったので、以下、名古屋地方裁判所民事2部の決定文から大事な部分をピックアップします。

「幼稚園は、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする施設である(学校教育法22条)。学校教育法施行規則38条の規定を受けて定められた幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号)には、幼児教育における留意事項として、心と体の健康は、相互に密接な関係があるものであることを踏まえ、十分に身体を動かす気持ちよさを体験し、自ら体を動かそうとする意欲が育つようにすること、様々な遊びの中で、体を動かす楽しさを味わい、自分の体を大切にしようとする気持ちが育つようにすること、自然の中で伸び伸びと体を動かして遊ぶことにより、体の諸機能の発達が促されることに留意し、幼児の興味や関心が戸外にも向くようにすることなどが明記されており(同要領第2章参照)、幼児が園庭において十分な活動を行うことは、その心身の健全な発達において重要なことといえる。

 債権者教会は、同様の考え方のもと、現に本件幼稚園における一日の活動の多くを外遊びに充てており、債権者在園児らにとって、本件幼稚園の園庭において日照などの適切な環境を享受する利益は、その心身の健全な発育へとつながる重要なものとして、法的保護に値するものと認めるのが相当である。

 そして、児童福祉法(平成28年法律第63号による改正後によるもの)に「全て国民は、児童が…社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない」(2条)、「前2条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない」(3条)と明記されたことも踏まえると、本件において、債権者在園児らの上記利益の程度を考えるに当たっても、同法の趣旨を十分に考慮しなければならない。」

結論としては、マンションの建築を差し止める結論には至りませんでしたが、前提の判断で、子どもに「園庭において日照などの適切な環境を享受する利益がある」と認めたことは、確かな前進だと思います。

裁判で新しい権利を積み重ねていくことは、とても大切なことだと思っており、とりわけ、建前と異なって、現実には軽視されがちな「子どもの発達権」を前提に、「適切な環境を享受する権利」を認めたことは、保育環境の劣化が問題となっている中で、とても大事なことだと思います。

名古屋教会幼稚園については、本訴を提起しており、そこでさらにしっかりと、子どもの、適切な環境を享受して発達する権利の重要性を主張をしていくつもりです。


by kahajime | 2018-11-29 17:38 | 保育